Chapter 1:

第二章:指先の温度、心の距離

夜桜の夢:出張風俗嬢ナナの物語


ベッドの隅に腰を下ろしながら、私は彼の手を取った。まだ少し緊張しているのが、指先の震えでわかる。

「ねえ……ちょっと手、冷たいね」私がそう言うと、彼は小さく笑った。

「ナナちゃんのが、溫かすぎるだけじゃない?」

そうかもしれない。

この仕事をしていると、人の心跳がよくわかるようになる。でも、心の溫度にはまだ…慣れていない。

……なのに、今日の彼は。いつもより少し、気になる存在だった。